共創フォーラム報告

【NEW!】09年度第2回共創フォーラム「共創で見えてくる、新たなCSRの可能性」(その2)
2009年12月16日 15:39

パネルディスカッション 「共創で見えてくる、新たなCSRの可能性」

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フォーラム概要

日時
2009年10月21日 15:30~18:20
場所
横浜市開港記念会館
    パネリスト
  • 日本アイ・ビー・エム株式会社 社会貢献 部長 川嶋輝彦 氏
  • 横浜市 教育委員会事務局 総務部長 内田茂
  • 日産自動車 株式会社 電子技術開発本部 IT&ITS開発部 エキスパートリーダー 二見徹 氏
  • 日産自動車 株式会社 グローバルブランドコミュニケーション&CSR部 課長 菅慶太郎 氏
  • 横浜市 地球温暖化対策事業本部 本部長 信時正人
  • 株式会社 大川印刷 代表取締役社長 大川哲郎 氏
  • 横浜市 共創推進事業本部 本部長 土井一成
  • コーディネーター

  • 横浜市 共創推進事業本部 担当部長 小林賢次郎
  • コメンテーター

  • 株式会社 日本総合研究所 ESGリサーチセンター長 足達英一郎 氏

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~ 行政から見た企業との連携とは ~1
(小林)いわゆる守りの部分である法令遵守やリスクマネージメントといった所から、次のステップとして社会貢献や企業戦略の中でCSRを生かすという攻めの段階に分かれるが、こういった企業価値の向上と社会価値の増大を両立させていく中で、これを行政の側面から見た上での企業との連携の意義や可能性、課題は何か?

(内田)日本アイ・ビー・エムに市立の小中学校で理科・環境・キャリア教育などさまざまな協力を頂いているほか、今年4月に開校した横浜サイエンスフロンティア高校にも日本アイ・ビー・エム、日産をはじめ多くの企業に支援を頂いている。この学校はまさに将来の地球環境などのさまざまな課題を解決する人材の育成がコンセプト。既に31社の横浜にゆかりのある企業に科学技術顧問として参加頂いており、順次出張講義や研究所訪問をお願いしていこうと思っている。その他、研究機関や10大学にも協力を頂いている。共創推進事業本部との関係では、横浜最古のサンモールインターナショナルスクールと教育連携の提携を結んだ。企業からの支援による学校のメリットは最新の社会情勢を題材に学習できる、それから日常生活と社会を結び付ける、教師以外の視点でキャリア教育や環境・英語教育などの学習ができる点だと思っている。

内田 茂 横浜市 教育委員会事務局 総務部長
1957年神奈川県三浦市生まれ。52歳 神奈川県立横須賀高校、横浜市立大学卒 1980年横浜市入庁 総務局、緑政局、テレビ神奈川、企画財政局、西区、(財)自治体国際化協会、市長室などを経て、 市民局市民情報室担当課長、市会事務局調査課長、教育委員会学校計画課長、市会事務局部次長などを歴任。 2007年~2008年横浜サイエンスフロンティア高校開設準備担当部長として横浜開港150周年記念事業のひとつである横浜市立の理数科高校「横浜サイエンスフロンティア高校」開校準備の責任者を務める。 2009年4月から教育委員会事務局総務部長

「共創で見えてくる、新たなCSRの可能性」~ 行政から見た企業との連携とは ~2

Blue Citizenship(信時)横浜は昨年環境モデル都市に選ばれたが、企業や市民にいろいろな形で支援頂かないと鳩山イニシアティブが提唱する2020年の時点でCO2を25%削減するのは難しい。その上で企業とどのように付き合っていくか、その代表的な事例が日産との「ヨコハマ モビリティ “プロジェクトZERO”」。同じ環境モデル都市の北九州は非常に企業と行政と付き合いの歴史が長く、密着した関わり方をしている。CSRについても、滋賀の近江商人の「売ってよし、買ってよし、世間によし」という考え方が本家大元だという声もある。そういう観点で見ると、企業から一方的に何かしてもらうのではなく、お互いのハーモニーだと思っている。企業は市民という仲間であり、人材や技術、ノウハウを持った資産であり、市役所にとっては収入源でもある。だから企業にはぜひ元気になってもらいたい。「ヨコハマ モビリティ “プロジェクトZERO”」についてはブランドづくりだと思っている。電気自動車が自由に走り回れる都市をつくっていきたい。

参考:日産ブルーシチズンシップ 「E1 Grand Prix」

信時 正人 横浜市地球温暖化対策事業本部 本部長
1956年生和歌山県出身、東京大学都市工学科卒、三菱商事株式会社勤務を経て、(財)2005年日本国際博覧会協会(政府出展企画・催事室長等)、東京大学大学院新領域創成科学研究科特任教授(柏国際キャンパス)、2007年4月より現職。2007年環境省カーボンオフセットのあり方検討会委員等、私的にはアーバンデザインセンター横浜コーディネーターとしてエコ戦略を産官学民のグループで研究・提言、少年野球NPOを立ち上げそれを中心とした総合型地域スポーツクラブの設立に向けて準備中。著書等:「ヒューマンセンターデザインの可能性」 SD社(共編)、「未来社会の設計」BankArt1929(共編・著)等


(土井)横浜市は特に企業に縦割りだと感じられている。共創推進事業本部ができたのは、それを何とかするのが主目的だと思っている。民間と行政各局との架け橋機能が使命。昨年7月に開設した共創フロントには9月末段階で105件提案を頂き、現時点で15件が実現した。効果としては、窓口設置によるアクセスのしやすさ、公民連携情報のノウハウ蓄積、対等対話による課題の認識や互いの資産・ノウハウの発見、提案の実現可能性を高めるなど。横浜は東京に近接し、ある程度ブランド力があり市民に人材も豊富と、実験都市としてやりがいがある場所であると言える。それから公共における新たなビジネスモデルを創出や、本日のテーマである企業のCSR活動を効果的に進める協力ができると考えている。共創の場の京形成イメージとしては、地域と行政の間のコミュニティ連携、企業の間のビジネス連携に加え、地域と企業の間の連携も生まれつつある中で、ジョイントセクターとしての役割を果たしていきたい。



土井一成 横浜市共創推進事業本部 本部長
1955年生まれ、北海道出身。東京工業大学建築学科卒業、社会開発工学修士課程終了。1980年に横浜市役所入庁。企画調整局・都市計画局・都市経営局などで、新横浜・京浜臨海部・山手地区などのまちづくり、総合計画策定、広域行政などを主に担当。前職は瀬谷区役所福祉保健センター担当部長。現職は2008年4月就任。

「共創で見えてくる、新たなCSRの可能性」~CSRの評価について~

(小林)企業の評価について、CSRをどのくらい熱心に、どんな所を重点に取り組んでいるかを外から見る尺度というのは今どういう状況なのか?

(足達)日本には社会的責任投資が6千億円ほどあり、投資信託や企業年金、公的年金など。ただ世界に比べれば大変少ない。評価の部分については、国際的なスタンダードはまだなく、それぞれが試行錯誤でやっているのが実態。大きく言うと倫理的な観点からスタートしているが、90年代後半からの昨今は長期的にCSRの取り組みがどう企業利益に結びつくか、リスクを回避するかを考えるようになってきている。とりわけ環境問題については評価尺度もかなり収斂してきた。試行錯誤ではあるが、企業の業績とCSRを結び付けるという考え方が主流になってきている。

(小林)では各社での社内評価はどのようにしているのか。

(川嶋)私はCSRを経営トップの意思だと思っている。自分の会社が何を持って社会的に尊敬されるのか、あるいはその活動によってどれだけビジネスにインパクトがあるのか。マーケティングと社会貢献や社会責任を結びつけてビジネスとして成果を上げている会社も出てきている。自分たちでこれだというものを決めることが大事。何を持って尺度とするのか、我々はまだ苦慮しているというのが現状。

(小林)経営者の意思という言葉が出たが、大川印刷さんでは経営者としてCSRをやっていくという意思をどのように社員に伝えているのか。あるいはどれくらい達成できているかの達成度合いのチェックは何か実践しているのか?

(大川)社員にどのように伝えるかは、とにかく志を伝え続けるしかない。現実に感じたことをリアルに、素直に伝え続けることを心掛けている。社内や社外の評価は、社員が元気かどうか、ステークホルダーとしてのお客さんが喜んでいるかどうか、地域を中心に評判はいいかどうかが尺度になるのではないか。

(菅)私どもは専門家の評価を社内の刺激ツールとして使っている。まだ発展途上の格付け評価の中で、有力で広範な影響力を持って評価している格付け機関があり、そんな評価を当社も用いている。CSRは元来会社の中から生まれてくるべきボランタリーなものであるからこそ捉えどころが難しく、見える化しないと進展させにくい。会社ごとに定義も違う。それを社内で推進するにあたって、格付け機関が示してくれているのはCSRの見える化であり、何ができればいいのか、どこまで進めばいいのかを他社との比較の中で示してくれるツール。そのような形でやってきたが、ここ1-2年、社内でより議論が高まっているのが、専門家だけでなく、ゴールは消費者や一般市民の方々に日産の価値を認識してもらわなければいけないということ。そのためにブルーシチズンシップという行動指針も新たに設置したという状況。

(小林)CSR活動において、NPOや市民団体、地域コミュニティなどから多くの支援依頼があるかと思うが、有効な資源を生かすためのパートナー選びの基準は?

(菅)当社は環境と教育と人道支援という3点を社会貢献の柱にしている。そのテーマに沿うプログラムであれば検討するというのがスタートの姿勢。その中で、継続が第一なので、それだけの基盤が持てるもの。ある一定の投資効果、例えばどれだけのお客さんに活動が届き、それに対しどれだけの投資が必要か等の判断を行って決めていく。我々はCSRは本業で社会のベネフィットにつなげていくもの、社会貢献は本業の横でやるものとして区別している。

(川嶋)本業がどのように生かせるかは顧客接点がどこにあるかが大きい。私どものフォーカスはほぼ教育に絞っているが、一番のネックは日本の教育が非常にトップダウンな点ではないか。キャリア教育や環境教育は単元に落ちない。これを学校に持ち込もうとしても先生が教えられない。だから、あえて仕事が増えても子どもの教育のためにやりたいという熱意を持っている方と一緒に取り組みたい。もうひとつは、企業と学校の間のギャップを埋められるNPOが存在するので、こういった方々と一緒に取り組むのが我々のモデルであり、行政と企業、NPOなどの非営利団体と一緒にうまく社会の問題を解決していくというのが我々のCSR活動の柱であり、パートナー選びの基準でもある。

(大川)私どもはそこまでできていないが、ある会社ではパートナー評価の基準がしっかりできていると聞く。ただ、私どものように地元で100年以上やっている企業としては、市民活動を一緒にやっていればある程度分かる。古臭い言い方では「評判」というものがあるが、そこを基準としている。基本的に協力依頼が来たときには、協賛や無償の物品提供は原則していないと伝えている。先ほど説明した身の丈に合わせつつ、ちょっと背伸びをするということで、それ以外のサービスができるような工夫を提案させて頂き、了解を得た場合にパートナーとして握手をしている。

(小林)行政から見たパートナー選びについては。

(土井)基本的にはスタッフによる議論、打診や提案、反応を受けての改良、そして対面の上で、実際に双方が合意に至るような場合は完全な橋渡しと公表というような流れになっている。担当者同士で共感、一緒にやろうというような気持ちが生まれるかどうかが大きい。うちの組織の目標としてはオープンマインドというものがある。ざっくばらんに現場の課題や企業の提案を結びつけないと実際にはなかなか難しい。土地や建物に関わるもの、制度や規制緩和に関わるものなど、まだまだ課題はあり、実現化までにいっていないものも現場サイドで議論・対話してやっていく以外にないのかなと思っている。

(信時)売り込みや提案は非常にたくさんきている。当然全部誠意を込めてお聞きするというのはあるが、結局全部できるわけではない。ただ、先ほど申し上げた通り企業は資産なので、できるだけネットワークは広めたい。いつかどこかで一緒に何かをやれる可能性もある。特に温暖化の問題は継続的な関係がいかにつくれるかということなので、ネットワークを保っていって、お互いハーモニーをつくれることを目指して少し長い目でお付き合いができるところというのを基準としている。

(内田)横浜市には513校の小中高校と特別支援学校があり、27万人の児童生徒がいる。従って教育委員会や私の感覚で言うと、あまり間口を狭めるようなことはしたくない。ありとあらゆる分野で児童生徒に世の中を知ってもらうという効果や可能性があると思っている。企業から見たら教育現場に出前講座や出張講座をつくるのはなかなか手数がかかるというのは分かるが、教育委員会の職員や教員も柔軟的な心を持って、共創推進事業本部のようなセンスのある職員を増やすことによって、支援の可能性を広めていきたい。

(小林)CSRは見方を変えればステークホルダーマネージメントという側面もある。では、地域というステークホルダーをどういう形で重視するか。地元あるいは思考など、どんな観点で付き合うのか?

(二見)渋滞緩和については、中国の北京で、オリンピックの時にプロジェクトを実施した。環境問題は一定の地域では収まらず、雛型をつくるという意味では横浜でやっているが、対策として考えた時にはグローバルにやらないと意味がない。それからシステムで考えるということや、バランスを持った視点を持つということは非常に大事。環境問題はリスクでもあるが、自動車会社にとっては新しいビジネスチャンスでもある。社会財産として機能する車のように、アイデアをどんどん出していくというのは正に共創のポイントなのだと思う。それから選択肢を与えるということが市民行動を変えるポイントであり、大切ではないか。

「共創で見えてくる、新たなCSRの可能性」~今後のCSRのあり方と可能性~

(小林)CSRに取り組む企業もそれぞれフォーカスや段階が違っている中で、CSRの今後の展望について金融経済危機による経営難から、経費節約のため、それまでCSRレポートを出していた企業がやめてしまったというようなこともあるようだが?

(足達)個人的な見解だが、CSRという言葉が経済活動の中に入ってきたのは企業にとって恐ろしいことだと思う。企業の懐具合が厳しくなってくると、CSRどころではないという話が出てくる。しかし社会的な問題が解決の方向に向かっていない状況で、関心の高い消費者を中心としたステークホルダーからすると、CSRに取り組んでいる企業とそうでない企業で必ず差が付き、結果、業績にも差が出る。そのような悪循環が生まれ、キャッチアップができないという可能性を秘めている。現在は確かにCSRについて二極分化が進んできているように思えるが、これは一度悪循環に陥ると、企業の存続を危うくする可能性もある。

(大川)我々中小企業にとっては取り組み方が違うからかもしれないが、CSRは怖いものではなく楽しいものだと考えている。いいことをやって喜ばれる楽しさ、嬉しさを我々は大きく感じている。大企業であれ、地域に愛され、必要とされる企業でないとダメではないか。地域に関してはクライアントや雇用もあり、切っては切り離せない重要なものだと考えている。

(小林)CSRはまだこれだという形で固まってきているわけではなく、これから進化していくものではないか?社会革新の時代、厳しい競争の時代の中で、差別化、競争力をつける、あるいはイノベーションを生み出すという観点においても、CSRは重要な要素。共創推進事業本部でも、ただ一緒にやるのではなく、新しい付加価値を、それぞれの持っている良さを出しながら新たなものをつくりだすということを心において実施している。企業も新しい市場をつくる、あるいは新しい取り組みや、他の企業とは違ってここに焦点を当てていくという取り組みのひとつがCSRの活動にも現れているのでは?

小林賢次郎 横浜市共創推進事業本部 担当部長
慶応義塾大学経済学部卒。旧日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。ロンドン首席駐在員、企業戦略担当(M&A)審議役、新規事業部長などを歴任。
現職は2008年4月就任。

以上


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